参加者の共通体験をきっかけとし、その体験下で心に残った本の一文、目に留まった記事、記した言葉などを壁に貼り、その記憶を一面の壁として仕上げるプロジェクト。上から和紙で覆うことでうっすらと記憶の断片が透けて見えてきます。
参加者が時を経て再度訪れた時、訪問者がこの壁と対峙した時、建物を通してどんな対話が生まれるでしょうか。
建物は、人々の営みの記憶を宿しながら存在感を強めるという側面がありますが、本プロジェクトでは、その表象として、建物の価値についての問いかけを試みています。
2021年4月17日に実施した古材研究所拠点での試みでは、コロナ禍中に目にした記事、読んだ本、書いた言葉で心に残っているものを参加者に持ち寄っていただき壁に貼りました。地域の持続可能性を追求する活動の拠点となっていく“旧剣道場”でこのワークショプを行うことは、建物と人との関係性のあり方の提示でもあると考えています。コロナ禍の不自由な日々に考えたこと、感じたことをアフターコロナの時代にふと思い出し、その時々の自分と社会を見つめ直す場として、時を経て記憶を繋いでいく建物になることを願っております。